あるガラス吹きの徒然日記。

glassrooms.exblog.jp
ブログトップ
2009年 02月 27日

おべんとうの味

d0029974_18595513.jpg

娘のために、妻がお弁当を作る。
たまにお弁当の日があり、ずいぶん可愛いお弁当を作っている。
いつもは給食なのだが、娘もこの日を結構楽しみにしているようだ。


子供の頃のことだ。
記憶に残っているのは小学校の何年生だったか、ある運動会での出来事。
大抵、運動会というと家族が観戦にやってきて、昼は皆でお弁当を囲む。
だが、そのとき僕は一人だった。
母はなにやら忙しくて学校に来れず、父も仕事だし、僕はお弁当を持たされた。
天気のよい運動会だった。運動会は次々と種目が過ぎて、僕は応援したり友達と遊んだり。

やがて昼になった。それまで応援したり喋ったりしながら校庭に並べた椅子に座っていた子供達はそれぞれの家族の元に散って行った。
そして、それまで友達といた僕は急に一人きりになった。
皆、運動場の端にある緑の多いところを陣取って、家族で大きなお重を囲んでいる。教室は電気も消え誰もいない。

僕は行くところが無かった。
一人お弁当を抱え、笑い声や歓声から逃れるように、でも教室にいるのも嫌で校舎の隅に腰を下ろした。
そんな姿を見つけ僕の友達が声をかけて来た。
「ひとり?僕のところで一緒に食べよう。」
そう言われて、僕は彼の家族とご飯を食べる事になった。彼の母親が遠慮なく食べなさいと、大きなお重に入った沢山のごちそうを勧めてくれた。
ここぞとばかり、豪華なおかずが目に入り、僕は思わず手を出して、食べ始めた。
ごちそうをほおばりながら、でも僕は膝の横に置いたお弁当が気になって仕方なかった。
母が朝早く起きて用意してくれたお弁当。
そっと開けてみると、のりの匂いとともに、おむすびと鶏肉の甘辛い煮物。
すこし地味だったけれど、僕の好きなおかずが詰めてあった。

ついつい、友人家族のお弁当をつまんでしまった僕は、それでも母が作ったお弁当を食べようとがんばった。でも、もう満腹だった。
結局、残してはいけないと思ったものの、半分ほどがそのままになった。
家に帰り、まだおにぎりが残っているお弁当を返した時、本当にごめんなさいと思ったものだ。


娘はどちらかというと小食だが、お弁当は残さないようだ。
食育などという言葉が最近あるが、母が手作りで作るお弁当というのは、きっとどの食事より食育になるだろう。親は大変だけど、その分子供には残るのだ。
申し訳ないが、あのとき友人の母にごちそうになった食事はあまり覚えていない。
だが、今でもあの時の母のお弁当の味はしっかり思い出す事が出来るのだ。
[PR]

by glassroom | 2009-02-27 19:06


<< 砂漠      見えないところの整理 >>