あるガラス吹きの徒然日記。

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2006年 09月 29日

ある話

書くべきか少し迷って、書く事にする。

古い友人が亡くなったと、風の便りのように知人から聞いた。
最初、聞いたとき僕は自分の記憶にある少年の彼の姿を思い出した。だが勿論彼も歳をとって、容姿は変わっていただろう。どんな生活をしていたのか、どこにいたのか僕は知らない。

僕は、彼とかなり仲良く過ごしていた一時期の事を、古いアルバムを開くように少しずつ思い出す。

初めて出会ったのは、彼が転校してきて教室で挨拶をした時だった。当時、同級生たちは歌謡曲ばかり聞いていた時代、僕は一人こっそりロックを聴いていた。

図工の時間、「木箱の制作」があった。僕はふたの部分になぜか「なまず」を彫った。ふと見ると彼はエレキギターを彫っていた。急になまずを彫ってしまった事をすごく後悔したが、分かったのだ。彼はギターをしていたことが。

音楽の話が出来なくて、流行歌の話をする同級生たちに、わからないまま相づちを打つ僕にとって、ロックの話をする事が出来る、唯一の友人をこうして見つけたのだった。

お互いのギターを見に、家に自転車で走り、宝物であるギターを自慢し合った。当時、ギターの効果音を作るエフェクターは高価だったので、一緒に作ったり、音楽雑誌を回し読みしたり、そうそう、年越しを僕の部屋でギターを引いてマンガを読んで過ごしたこともあった。

こうして書き始めると、忘れていた事を思い出していく。だらだら書いてしまいそうだから、ここらでやめる。これは僕がきた道のわずかな話。

彼が生きていても、この先会う機会があったかどうかわからない。だが、いなくなってしまった事で、この話をこんな風に公開しても、これは僕だけしか意味を持たない話になった。

自分の話の価値に共有できる人を持っている。歳とともにそういう人が増えて行く、そんな人がこの世に存在することが自分の幸せであることの一部分だった。
彼の死がそう思わせたのは皮肉というものだろうか。孤独だったろう彼を偲んでこの話を書いてみた。
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by glassroom | 2006-09-29 22:47


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