2006年 08月 28日

ボレロ

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ボレロという有名な曲がある。
初めは耳を澄まして聞き取るほどの小さなフルートが奏でるメロディ。
小さな水滴のようなそのメロディがやがて木管楽器を、金管楽器を、打楽器を、だんだんと数を増やし、メロディは厚みを増し、やがて大河のような重厚な曲へと展開する。
このドラマティックな展開は、しばし物語や人生のようだといわれる・・・


僕と妻は初め、その小さな水滴のようなメロディを感じ取っていた。
それはまだ、7月の終わりだった。
今年は夏の訪れが遅いね、などと言い合いそしてまだワクワクとした気分でありながら、この小さなメロディが始まっているのを少し不安になりつつ聴き取っていた。

やがて、リズムとメロディーは継続しながらもフルートの響きはクラリネットへと、バスーンへと、そしてオーボエに・・少しずつ楽器は増えていく。

いつから宿題を始めるのだろう・・・

少しずつ、警鐘を鳴らすかのようにメロディは厚みを増しているのが僕らには感じられた。
だが、夏真っ盛り。旅先で少し「植物の観察」でもしてみては?という僕らの提案は息子にはまだ鳥のさえずり程度だったようだ。
だが、僕らにはそろそろ金管楽器、トランペットとテナーサックスとソプラノサックスがメロディーを奏で始めていたのだが。

やがて楽しい旅も終え、夏の様々なイベントも終息に向かう。すでに僕らの中ではフルートとピッコロとオーボエとコーラングレとクラリネットとサキソフォンの響きが渦巻き、シルヴィ・ギエムが頭の中を踊りだしていた。

どどど、どーするんだ、息子!あと4日やないか。漢字プリントと総合学習研究と農業調べ、水産業、読書感想文、そそそそして自由研究!!
だが、彼は悠然としている。
「ちゃちゃっとやればええやんか。」


そしてラスト一日。
明日から学校である。もう僕と妻の中ではフルートとピッコロとオーボエとコーラングレとクラリネットとトロンボーンとソプラノサキソフォンと第一バイオリンと第二バイオリンとヴィオラとチェロがクライマックスの地響きのようなボレロを響かせている。

「おまえ〜、どうするんじゃあ!!明日から学校やぞ!そして今は昼や。まだ自由研究、ゼロや、ゼロ。どうするねん〜〜!!」

それから、自由研究テーマ、「植物観察」をすべく家の中にようやく採ってきた植物が飛び散り、画用紙が散乱し、あ、お前こっち持って、ママこれ何、パパテープどこ、きゃあ、草ふんじゃった娘、泥を水道に流すな息子とまさに修羅場。

そのとき!
「あ!待て。どこ行く!」
僕の声で脱兎のごとく走り去る息子。
信じられない事に彼は夕方から自治会の「夏祭り」へと出かけてしまった・・・・止める声も聞かずに。


ボレロの終演は今朝だった。もう知らんと寝てしまった僕らだが、自分でなんとかやっていた様子だ。
朝、起きると、息子は深い寝息を立てて眠っていた。
横にはなんとか仕上げた宿題が散乱している。
息子を叩き起こす。もう学校へ行く時間だ。
「何時までやってたんや?」と僕。
「2時」

どアホな息子。来年の宿題は勘弁してほしい。



(写真は友人I氏の作品)
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by glassroom | 2006-08-28 23:44 | 日々の出来事


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